会報第8号

もくじ
長崎で「九州販売士交流会」が開催され参加
  = 各協会間の連携・協力を推進 = 
福岡販売士協会「夏の納涼ビアパーティ」報告
「第3回夏季研修会」開催
  〜「小売業のチャネル政策」をテーマに〜
会員から
 “人を動かし喜ばすこと”
 “販売士資格の取得を通して得たもの”
 ブームです!しょうちゅう乙類(本格焼酎)
 “ゼロ の 考察”
 東京便り
 禁煙席とたばこを吸わないお客と



長崎で「九州販売士交流会」が開催され参加
 = 各協会間の連携・協力を推進 = 

 平成16年度事業の一環として、九州管内の各協会間の連携・協力を更に活発に促進していこうとの主旨のもとに、先ごろ、長崎市において「九州販売士交流会」が開催されました。
 この交流会の第1回は、昨年の秋に日本販売士協会の支援を得て当協会(福岡)の主催で試行的に開催いたしましたが、参加された各協会員の方々から九州地区の活性化のために大変よい企画だとの声が上がり、今年度(平成16年度)からはお互いの共通事業として持ち回りで継続開催していくことになったものです。
 ますます変革がすすむ流通業界にあって、私たち販売士は現下の時代の要請にしっかりと適応していける資質を磨いていく必要性に迫られていると同時に、その能力が一段と重用(ちょうよう)される時代に入ってきたように感じます。
 私ども福岡販売士協会としては、是非、この会を将来に亘り発展的に運営していけるように努め、当協会が目指す「地域流通業界への寄与」という面からも、なお一層自分達の視野を拡げながら研鑽できる機会として活用していければと願っています。
 以下はこの11月、長崎販売士協会の主催で開催された交流会の模様です。
 なお、平成17年度は再度、福岡市において当協会主催で開催することも決まりましたので、その折には、また多数の方々の参加をお待ちしています。

<平成16年度 九州販売士交流会>

 日 時  平成16年11月13日(土) 14:30〜17:30


 場 所  長崎商工会議所2Fホール


 参加者  長崎、島原、福岡の3協会等から36名(うち福岡12名)
* 現状、九州地区ではこの3協会以外まだ結成されていませんが、熊本、佐賀の方がそれぞれ県外会員として長崎、福岡の協会に加入されています。


当日の会次第(敬称略)

 第1部 
(14:30〜16:00)
 (1) 主催者挨拶
  長崎販売士協会  会長  富永 広道

 (2)来賓代表挨拶
  日本販売士協会  専務理事  山本 宣尚

 (3)来賓紹介
  各協会会長並びに地元長崎の賛助会員の方々

 (4)活動事例発表
  「販売士資格と私」
  発表者 長崎販売士協会副会長 冬木 繁雄

 (5)講演
  「良い販売員となるために必要なこと」
  講師 (株)梅月堂 代表取締役 本田 時夫

 第2部 
(16:00〜17:30)
  懇親会(立食パーティ)


 [交流会の模様]

 当日は、長崎販売士協会の小谷登志子研修副委員長の司会で開会し、冒頭、今年度の主催者である同協会の富永会長から、九州交流会が発足に至った経緯と今後の当交流会発展に向けての心強い挨拶があり、参加者全員から盛んな拍手が送られました。
 また、来賓代表として挨拶された日本販売士協会の山本専務理事からは、昭和48年に販売士制度が発足して以来、この30年間における流通業界の変遷についてのお話がありました。その中で、特に象徴的な変化の例として紹介があったのは、今年大きなニュースになったスーパーダイエーが昭和48年に、はじめて売上高で百貨店の王「三越」を抜いた年であったことなどに触れられ、この間の市場の変化により如何に流通業界が様変わりして来たかと言うことの再確認と併せて、現在、販売士制度も時代の変化に見合ったものへと全面的な見直し改定が進められているとのお話(別掲参照)がありました。

  (1)事例紹介

 「販売士資格と私」と題して、地元長崎の冬木副会長から販売士資格取得前の16年間と取得後の8年間におけるご自身の会社生活を振り返って、意識や行動がどう変化してきたかの体験談を語って頂きました。
 入社以来、種々の仕事に従事され、その体験から得た一社員として、また一管理者としての立場から「組織におけるリーダーシップやコミュニケーションの大切さを痛感されたこと。また、目標設定と計画策定が如何に重要であるかを体感したこと。更には、それらを通じて結果を出すことこそがビジネスの最終目的であること。そして、そのためにリーダーは自ら率先垂範して行動すること。」等々、氏がその時々に気づかれ実行されてきたことを30分という短時間の中で紹介して頂きましたが、味わいのある貴重なお話でした。
 当協会内においても今後、このようなことを日常的に会員同士でお互いにやり取りし合って、相互研鑽を重ねていくことも有益な方法だと感じながら聴かせていただきました。

  (2)講 演

 今回は、長崎の洋菓子の老舗、(株)梅月堂の社長であり地元浜町商店街の副会長も務められている本田時夫様に「良い販売員となるために必要なこと」と題して、日々同社で実践に努められている商いの根幹について、実に共感と感動に富むお話をいただきました。
 ご講演の内容を、そのままお伝えできないのが残念ですが、限られた紙面の中でお話のあった順に一聴講者として要約させていただくと以下のとおりです。

 1、 良い接客とは
  客に直に接する販売員が持つ心と販売技量の如何で店の評価は決まると言っても過言ではない。それ故に、販売員は「愛想がよくて、しっかりしていること」が必須条件だと考えている。
 @「愛想がよい」というのは → 良い雰囲気、ムードがあること。
 A「しっかりしている」とは →商品知識があり、販売技術に長けていること。

 2、 接客において大切な4つの要素
 @「笑顔のある明るい表情、正しい姿勢、機敏な動作」が→信頼感につながる。
 A「熱心な聞き手になること」で→お客様は楽しくなり、心を開いてくれる。
 B「感謝の気持ち、素直な気持ち」が→心のこもった接客につながっていく。
 C「チームプレー」に徹すれば→職場のひとり一人が共通の意識を持って働ける。
以上の4つを日々実践できるように努めている。例えば、@を例に挙げれば当店では機敏な動作を養うために、入社時から如何にお菓子を早く作れるかを競わせているが、こうすることにより完成度も高くなる。また、立ち仕事というのは正しい姿勢を保つことで体への負担が軽くて済むということも実感できるよう指導している。

 3、 販売員に本当に必要なものとは
 常々、マニュアルを越えた接客行動ができるようにと言って聞かせている。言い換えれば、マニュアルの奥にある心を知り養うこと。それには次の3つのことが肝要だと思っている。
 @想像力を養う→それには「情報収集と物語化」をすること。
 まずは、日常生活の出来事から自分なりに何かを感受できる心を養うこと。それには、本でも映画でも料理でも何でもいいから、広く関心を持つようにすれば自ずと自分の心は敏感になってくるものだ。そんな心で、販売員であればお客を主人公にした物語を繰り返し想像(イメージ)していけば、自分がどうあればお客様という相手に喜んで貰えるかがはっきりとわかってくるはず。
 A競争心を養う→それには「お客様や同僚、他店・他社と競争」すること。
 良い意味で、まわりと競い合う心を持つことは相手のことがよく分かるようになり、自分を高めることに繋がる。
  ◎お客と競えば、その客の生活感や価値観、求めていることなどが分かってくるし、
  ◎同僚と競えば、どうすれば仕事の効率が上がるかとか、客にどう接すればよいかなど相手から学ぶことができる。
  ◎また、他店・他社と競えば、結果として客数や売上も利益も上がるようになるものだ。
 こんなことを、実感できるまで徹底して競技することが大切だと思う。
 B夢を持つ→それには「お金で買えない夢、人間性を高める夢」を持つこと。
 自分の人生に対しての夢を描き持つことが大事だと思う。目指すことを曖昧にしたまま漠然と日々を送るのではなく、一人間としてありたい姿(夢)を持って努力すると人生が楽しくなり、不思議に望むような方向へと進んでいくものだ。

 4、 「君子に九思あり」
 菓子店というのは、平和な地でしか成り立たないもの。このことを「お蔭様で」と有難く受け止め[論語]にある次のことを日々自分に確認するよう心掛けている。
 @視るは明を思い(ものを見るときは、はっきり見ようと思うこと)
 A聴くは聡を思い(人の言葉は、よく聞き分けようと思うこと)
 B色は温を思い(自分の表情は、穏やかであろうと思うこと)
 C貌は恭を思い(自分の態度は、控え目にしようと思うこと)
 D言は忠を思い(発言に際しては、誠実であろうと思うこと)
 E事は敬を思い(仕事をする際は、慎重であろうと思うこと)
 F疑わしきは問うを思い(疑問にぶつかったら、探求しようと思うこと)
 G忿(いか)りには、難を思い(腹が立ったときは、爆発させた後のことを思うこと)
 H得るを見ては義を思う(利益を前にしたら、筋が通っているかと思うこと)

以上のような要旨のほかにもご講演後、聴講者からの質問に「パートの方でもリーダーとして、管理者として適材の人は店長に処遇している」などとも答えられていました。本田社長の明快な語り口と温かいお人柄が印象に残った講演会でした。本当に有難うございました。

  (3)懇親会

 会場を移しての懇親パーティは、福岡の栗川会長の挨拶と乾杯の音頭でスタートし、大いに歓談と交流がすすみ、それぞれが思い思いに相手を見つけては名刺交換やお互いの協会の活動状況を紹介しあったり、講師のところに質問に行ったり、仕事や趣味の話に没頭したりして大変に盛り上がっていました。
 また、パーティが始まって間もなく司会から、福岡の泉研修委員長が差し入れをした馬刺しや岡野企画副委員長からのサーティワンアイスクリームの商品券の提供があったことなども紹介され大きな拍手が上がっていました。
 更に、会の半ばには司会の小谷さんの名リードによるビンゴゲームで笑いの絶えない活気ある声が飛び交う本当に楽しい時間が瞬く間に流れて予定の時間になりました。
 そして、中締めでは島原の林副会長が威勢良く発声され、最後は福岡の石原副会長の挨拶と博多手一本で来年の福岡での再会も誓い合って散会しました。

〜販売士ハンドブックの全面改訂について〜

 1. 見直しのねらい=
@ 1.2.3級間の科目体系、記述内容の整合を図る。
A より実践に即したものとする。

 2. 各級の位置づけ=
3級は「基礎」、2級は「応用」、1級は「発展」と位置づける。

 3. 新科目=3級、2級、1級とも共通の名称で下記の5科目になる予定。
「小売業の分類」「商品政策」「店舗運営」「マーケティング」「商品関連知識」

 4. 改訂版の発行予定=
3級は平成16年度内、2級は17年度、1級は18年度に発刊の予定。
 5. 試験時間=科目数の減少に伴い、試験時間も短縮される。

           
石原 義曠  記



福岡販売士協会「夏の納涼ビアパーティ」報告

平成16年8月21日
岡野 卓也  記

 福岡販売士協会の集まりの中で話題となるのは会員相互の親睦を図り、会員の増員計画を進めるべく、何か皆さんが参加出来て楽しい企画を立案して貰いたいとの要望が会員から出ておりました。
 その様な時、頭の中では、夏休み、海、キャンプ、バーベキュー・・・・・と考えると「海辺でバーベキュー」のイメージが浮かびました。夏休みに家族連れでデイキャンプの企画が面白いのではないか?と考え企画し、役員会に提案しました。役員会の席上面白い企画であるけれど、予定日が雨の場合どうするの?との対策のひとつに「ビール工場の見学及びビアパーティ」の代替案も含め提案いたしました。役員の大半はビール工場見学コースが面白いとの事でとんとん拍子に決まった企画でした。平均年齢の高い役員の場合、やはり涼しくて、簡単に飲める企画が良かったようです。

 実施日は8月21日土曜日、11時に「アサヒビール園博多」へ集合しました。  参加者は、総勢20名、石原顧問のご家族を筆頭にお子様4名の参加も頂き、工場見学に出発しました。当日は生憎土曜日で工場は休業でしたが、コンパニオンを先頭に見学コースを廻りました。約2名の遅刻者もありましたが、10分遅れの見学コースに間に合い、試飲会場で合流し全員もれなく集合致しました。試飲時間は約30分あり、黒ビールの味に感激、2杯、3杯と試飲が続き、昼食前にほろ酔い気分となった試飲会場でした。
 当日のビアパーティ会場へ移動すると、すでに会食をするグループや家族連れが数組ありました。我々のメニューは牛肉のしゃぶしゃぶ、焼肉コースです。
 テーブルにはしゃぶしゃぶ鍋と焼肉の鉄板と交互に配置され、それぞれ好きな場所に着席し会食を始めました。飲物はもちろんビールです。乾杯の挨拶もそこそこに始まりましたが、試飲で飲んだビールが効いたのか、皆さん意外に箸が進まない様子です。いつしか、席替えが始まり、ビールから冷酒、焼酎に移行し話しがおかずとなっているようです。
 石原顧問におかれましては、今年で酒業界に入りちょうど50年を迎える節目の年であたられるそうです。結婚生活で言えば金婚式にあたる節目であります。この様な記念すべきお祝いに席を兼ねて、企画が出来た事は非常にうれしい限りです。

 さて、今後の福岡販売士協会の活動ですが、会員相互の親睦を更に深めるべく新しい企画をどんどん提案し続けます。皆様方の要望をどんどんお聞かせ下さい。次の企画は「ゴルフコンペ」「長崎地区での交流会」を準備中です。皆様方の積極的なご参加をお待ちしております。オリンピックではありませんが参加することに意義があります。皆様方で福岡販売士協会を盛り上げて行きましょう。


「第3回夏季研修会」開催〜「小売業のチャネル政策」をテーマに〜

平成16年7月10日
会長 栗川 久明 記

 福岡販売士協会では、7月10日に福岡商工会議所で第3回夏季研修会を会員23名が出席して開催しました。福岡商工会議所の久保部長を来賓に迎え、第1部は講演会・第2部は懇親会を行いました。
 講師は会員の山崎良一さんですが、山崎さんは、平成8年に1級販売士、10年に中小企業診断士に合格、50歳で大学院修士課程を卒業され、現在「山崎マーケティングコミュニケーション」の代表としてコンサルタント活動をされています。
 「小売業におけるチャネル政策の一考察」というテーマで、内容は@マーケティングにおけるチャネルの位置づけ・意義、A流通経路の複雑化、Bチャネル多様化の必要性、Cチャネル多様化実現のための課題と着眼点についてお話いただきました。
 日常のコンサルタントの中で「現状の販売チャネルと現状の商品でやっていて大丈夫でしょうかね」というケースが非常に多いので、今回のテーマを選定されたそうです。


“人を動かし喜ばすこと”

「喜働経営」主宰
一級販売士 大原 盡

 ■ 登録講師に至る経歴
 「喜働経営」を主宰、23年間にわたり能力開発アドバイザーと販売士スクーリング講師をしております。
 昭和16年に横浜Y校を卒業後、百貨店勤務。定年間近に販売士の試験制度を知り、「定年後の仕事は」と真剣に考えた末、早速、2級販売士ハンドブックで独学している中に自分の無知に気づかされました。資格取得後は、小売業を目指す若い人々の希望がもてるよう後輩の指導をしようと決意を固めました。
 昭和51年に2級合格、53年に1級に合格して、同年5月に開催された第2回販売士養成講習会講師養成研修会に参加しました。その年に提出した論文『小売業の活力経営のすすめ方』が入選。翌年の第1回登録講師研修会にも参加しました。
 ■ 登録講師としての経歴
 54〜6年の間、北九州職業訓練協会の販売科講師を勤め、『3級販売士ハンドブック』を教科書に、講義法の受講が役立つとともに、長年の販売経験で、すぐ講義に馴れました。
 また、昭和54年から平成2年まで、北九州商工会議所で2・3級販売士資格更新講師に従事。55年5月から公開経営指導協会の2級販売士スクーリング講師、56年から平成2年まで販売士検定試験委員(北九州商工会議所)に従事しました。
 これまで指導した中で、3級合格率は、最高98.4%(福岡県就業婦人援助センター)。福岡丸食では93%の合格率(初めて全社的受験を奨励したため)。平成6年〜11年に北九丸食で公開経営指導協会の3級販売士スクーリング講師を勤めました。
 トップの理解がある会社は、講座の初回に自己啓発に熱心な受験生が多いので、合格率は高く、次第に意欲に欠ける受験生となり、合格率は低下します。卸売業、メーカーからの受験が増えた時期もありましたが、今は学生が多数受験、就職用に、3級は勿論、2級までも資格を取得するようになっております。
 スクーリングにおいては、合格のため、健脳法と心の持ち方、勉強の仕方を助言すると共に、教科書の内容を、これまでの体験事例で補完。販売士合格後の態度・動作を実地に指導し、人間好きになり、ニコニコ・ハキハキ・キビキビした行動をとることを第一として教えております。
 ■ 使命感を見出す
 今私は、意欲ある若人に、販売士になる受験の勧誘と指導を行うことに、生き甲斐を感じております。
 販売士の受験勉強中に、小売業の方向性を学ぶとともに、自分の進路を見い出し,コンサルタント的思考になり、「商いの道」の奥深さと人間学の研鑽を痛感するようになります。
 オンリーワンの能力開発アドバイザーとしては、本人の自己再発見に役立つ助言により、本人が自身を持って今後の人生に取り組めるよう支援しております。
 何事も、熱意と力と意気で、人を動かし、喜ばすことが、私の使命感といえます。
 ■ 提言
 「販売士は如何にあるべきか」。資格取得は販売士として出発する第一歩であり、行動指針に「士魂を磨くために、何をなすべきか」の明確化が最も重要になります。
 商いの基本は「正直」であり、この基本を忘れず、商業道徳の振興・実践を行うべきでしょう。たとえ、砂漠のような商環境であっても、それをオアシスのように、人々の心を癒し、和ませる店づくりに挺身して、ともに喜びを分かち合うのが販売士の在り方であると提言する次第であります。


“販売士資格の取得を通して得たもの”

副会長 一級販売士 石原 義曠

 電機メーカーを定年退職した私は、その後、関係会社を経て、昨春からは福岡市の外郭団体に勤務しているが、福岡販売士協会の活動には、縁あって2年前の発足当初から参加させて貰っている。時の流れは早いもので、私が、販売士資格を取得したのは、販売士制度が発足して間もない昭和50年から51年にかけてのことだった。その当時のことは、今なお、特別に懐かしい思い出の一時期として記憶している。
 ちょうどその頃の日本は、昭和48年秋のオイルショック後の「狂乱物価」により、かつてないほどのインフレと不況が同時に進行するスタグフレーションに襲われ、国中が慌てふためく先行き不安な時代であった。インフレとデフレの違いなど種々要因は異なるものの、現下と同様に厳しい変化に見舞われた時期であった。幸いにも、暫らくしてその危機を見事に乗り切り、省エネや技術革新によって、飛躍的に企業が国際競争力をつけていった逞しい時代でもあった。
 そして、世の中がそれまでの高度成長から低成長経済へと大きく様変わりして、産業の面でも、「重厚長大」から「軽薄短小」といわれる時代に移行して行ったのも、この時期からであった。今思えば、こうした激動の環境の中で、自分なりに時代が求めるものが変わり行くことを体感し、何か行動を起こさねば、という危機感のようなものに駆られてのことだったと思うが、いろいろと新しいことに挑戦していった体験が甦ってくる。
 その当時の私は、入社して二度目の転勤をした直後で、ようやく、妻子共々、首都圏での生活にも慣れ、新米管理者として日々の仕事に熱中していた。休日には同好の仲間と共に社会貢献活動をしようと寸暇を惜しんで地域の少年野球チームの結成と指導に情熱を燃やす日常であった。思えば、何とも若さが羨ましい、積極性に満ちた時期でもあった。
 振り返ってみると、このような活動的な日常生活があったからこそ、変化と不安に満ちた環境の中で何かを求めて挑戦したいという前向きな気持ちと活力を生んでくれたように思える。そんな当時のいくつかの挑戦体験のなかで、「販売士」を勉強しようと思った動機のひとつは、その頃、自社はもちろんのこと、世の各企業が、挙って時代を先取りしようと営業革新を謳い、販売体質の見直しに着手し始めた時期であったこと、もうひとつは、私自身が初めて前線営業と身近に接する立場になったことからだった。
 低成長時代の中で、企業にとっては営業面の改革が不可欠になったために、わが社の内部においても、種々の試みと推進策がとられ、管理部門にいた私にもその勢いを肌身に感じさせられる程の状況にあったことを記憶している。結局のところ、この環境に身を置いていたことが自分に営業や販売に対しての強い関心と興味を抱かせる結果になっていったように思う。
 ほぼ、時を同じくして発足していた販売士制度の趣旨がそうであったように、当時は、どの業種・業態の企業においても、新しい時代の到来に適応でき得る営業人材の育成と確保が重要な命題となっていた。このことから、私の会社でも、営業革新運動のなかで新たに行動科学を取り込んだ独自の営業教育システムを開発し、全営業部門者の必須教育として展開するなど、特に、意識改革による旧来型の営業や販売のあり方の転換に力を注いでいたことを思い出す。
 私自身も、その推進に社内のトレーナー資格を得て企画担当として参画していたが、ちょうどその時期と前後して販売士の勉強も始めていたため、毎夜、仕事が終えてから空腹の身のまま講習会に通っていた頃のことが重なり合うように思い浮かんで懐かしい。因みに、販売士資格は、2級を昭和50年に、1級を51年に、といずれも第1回の試験の時に取得することができ、後に、登録講師論文で佳作の賞をいただくなど啓蒙されたこともあって思い出深い。今でも、最初に販売士を出発点に選んで勉強を開始したことに、我ながら先見の明があったと密かに満足している。
 自分のような者でも、「販売士」を学んだことで、容易に販売に関する基本的な事項を体系的に学び知ることができ、それが基礎となり支えとなって、その後のマーケティング関連の学習へと階段をあがることができた。実務の面でも、こうして学び得た知識や経験を、メーカー時代には管理者として、さらに関係会社時代には経営の立場から実践の場でしっかりと行動に結びつけ、移し替えて成果を出していくことの楽しさを体験させて貰うことができ、ありがたかった。偏に、販売士制度との出会いがあったからこそ、と改めて当時を思い出している。
 そして、今もまた、終生の地福岡で、販売士協会の活動を通じて、新たな出会いや交流の機会に恵まれていることに感謝している。
 折角の機会を頂いたので、最後に、現制度に関し以下の愚案を提起申し上げて結ばせていただきたい。詳細は省くこととして、販売士制度を、実業界がより歓迎し、個々の販売士も、さらにプロフェッショナルな人材として認知され、活躍できるよう、現行内容を一歩踏み込んだ「業種・業態別資格」のようなものを創設できないものか提案したい。例えば、それぞれの分野の法規・法令や専門知識、ノウハウ等を織り込んだ実践的資格とするために。


ブームです!しょうちゅう乙類(本格焼酎)

顧問 一級販売士 石原 敏

 @ 芋が足りない
 平成15年全国で出荷されたしょうちゅう乙類は前年に比較して15.2%増加しています。これを主要原料別に分類しますと、いも27.5%増、麦12.3%増、そば11.6%増、米8.3%増(外省略)となっていて、いもの増加率が目立ちます。サツマ芋の作付面積は限られていますし、年に一度しか収穫できません。澱粉、食用、その他の用途もあり焼酎好適種ばかりを増産する余地も制約があり、今芋焼酎は極度に不足しているのです。新聞に国外冷凍芋や中国産などの記事が出るのはこの状況を反映したものなのです。成り振り構わぬ業者が出現して格安品やまがい品で市場信用が崩されるのが心配されます。

 A まぼろし
 伊佐見、百年の講読、森偉造、馬王、理右衛門?何れも酒店の陳列では見られない幻銘柄をもじったネーミングでありますが、何故か最近は焼酎へ焼酎へと風も波もお客さんも導かれて吸い寄せられているようです。「欲しい物はどうしても欲しい、手に入れたい」これは結構なことでありますが、それを種に悪事を働く奴も出没しているようで、偽造とかネット不良取引とかで失敗した話もよく聞くのは悲しいことです。普通プレミアムが付くというものは大量に出回らない物に限られている様ですが、先程の幻銘柄も小メーカーの製品ばかりです。増設して余計に造ればブームではなくなりますし、又ブームは恋心みたいに移ろい、さ迷うものだから始末が良くありません。

 B トップ銘柄
 ところで本格焼酎の大量有名銘柄にはどんな物があるのでしょうか。最新調査を表にして見ましょう。
表A 芋、麦、米、ソバ等全種合計でのランキング
平成15年
ランク企業名出荷数量(石)備考
三和酒類488,000いいちこ
雲海酒造182,020雲海・いいちこ
霧島酒造153,000霧島・黒霧島
薩摩酒造名150,000白波・神の河
二階堂酒造148,000二階堂・吉四六
高橋酒造96,500白岳・しろ
福徳長酒類91,320博多の華
神楽酒造86,000くろうま・天照
浜田酒造72,500薩摩富士・海童
10宝酒造46,420よかいち
 *1石は1.8Lビン100本です

表B 芋だけののランキング
平成14年
ランク企業名出荷数量(石)備考
霧島酒造104,990黒霧島・霧島
薩摩酒造102,200白波
大口酒造32,940伊佐錦
長島研醸24,000さつま島美人
小正醸造12,870さつま小鶴
浜田酒造12,680薩摩富士
雲海酒造10,800日向木挽
本坊酒造10,000桜島
小鹿酒造8,910小鹿
10若潮酒造6,885さつま若潮

 九州沖縄だけで360有余を数える本格焼酎メーカーがあります。表に出ていない業者が如何に小規模であるかがご想像頂けるだろうと思います。

C 税金はどうなの?
 酒類に税金がかけられるということは皆さんご承知の通りですが、しかしどの位の金額なのか、その実態まではご理解頂いていないと思います。ここで焼酎だけではなく他との比較で調べて見ましょう。全部同じサイズ1.8リットルに統一換算して比べます。

表C 酒税負担額(1.8L当り)
酒類別度数酒税額
清酒15252.90円
しょうちゅう甲類25446.58円
しょうちゅう乙類25446.58円
ビール5399.60円
発泡酒5.5241.65円

 なんとご覧の通り焼酎は国家のために大きな貢献を強いられているのです。財務省は焼酎ブーム大歓迎、ニコニコでしょう。尚この酒税にも更に消費税5%が上積みされます。愛飲家の方は勲章を貰うべきでしょう。
資料:国税庁 日本酒造組合中央会 業界紙




“ゼロ の 考察”

研修委員長 二級販売士 泉 亨

 昨今ほど、食の安全・安心が取り沙汰されたことは、過去に例を見ないことと思われます。安心=安全とは云えないというのが私の持論ですが、ゼロの視点からいくつか例を取り上げて話を進めたいと思います。まず最初に、皆さんご存知のノンアルコールビール!日本の酒税法ではアルコール分1%以上をお酒と規定しています。従って、当然のことながら1%未満はお酒とは云わないのですね。宴席等で今日はハンドルを握るのでと、ノンアルコールビールを飲まれる方がいますが、ガブ飲みすれば酒気帯び運転の可能性を否定出来ないと云うことです。他にも色々とゼロなのかな?何故ゼロではないの?と云った商品が色々とあります。
 ノンカロリー、ノンシュガー、カロリーゼロ等興味を持って調べれば随分と可笑しな商品が目に付きます。 
 砂糖不使用と表示されたお菓子もその一つです。当然、甘さを抑えたものと考えられますが、実際はどうでしょう?中には糖度10%以上の甘ったるい物もあります。果糖や乳糖は砂糖ではないと云うのがその理由です。納得出来ますか?わたしは現在ウエストサイズ85cmを在りし日の姿である78cmまで落としたいと、お昼はお握り2個でダイエットを心掛けていますが、罪なお菓子ですよね。勿論夜はお昼のことをすっかり忘れて、飲んだり!食ったり!で効果のほどは今のところ全く見えてこない毎日ですけど。こんな例もありますよ。厚生労働省の発表では、2003年度の食品添加物の検疫は総量の約1%しか実施されていません。しかも、その内の約半数は輸入業者自身がサンプリングを民間の検査機関に持参して報告しているのが現状です。ゼロあるいは限りなく ゼロ に近い状態では困りますよね。
 話は変わりますが、牛肉や豚肉はオスの肉は販売されていない(ゼロ)と云ったら驚きますか?自然の摂理で当然のことながらオスもメス(メン)も同じように生まれてきます。ではオスは一体どうなるのでしょう? 実は、メンの肉はキメが細かく柔らかくて風味が良いが、オスの場合は、キメが粗く肉質、肉色ともメンに比べて品質が落ちます。ですから、生後まもなく去勢して限りなくメンに近い状態で飼育するため、ヌキと呼ばれています。つまりオスではなく云わばニューハーフ! これって本当に可愛そうですね。こんな話もあります。山地で自生しているから山菜!ところがビニールハウスで栽培された山菜が、本来の味も香りもなく、つまり見た目だけの山菜として出回っています。昔乍らの少々手間は掛かるが自然の風味が楽しめる山菜は、その内 ゼロ に近づいていくのではと危惧するのは私だけでしょうか?
 おいしい物を食べるために自然の摂理に反した行為をする。コスト優先の行為に走る。売らんがため!儲からんがため!の商行為が平然と行われる。私たちが生きることの原点である食の世界、色々な意味で見つめ直して見たいものですね。食によって人は変わります。食によって人は幸せにも不幸せにもなると云うことを真剣に考えてみたいと思いませんか?


東京便り

一級販売士 秋本 香織

その1
  「スイカがグレードアップ!」
 JR東日本が導入している「スイカ」というカードをご存知でしょうか。改札機での入出場がチケットレス、また予め入金しておくと乗り越し精算もキャッシュレスで利用できる(最近はショッピングも可能)便利なカードです。
 この度、スイカにまた新しいシステムが登場しました。それは普通車のグリーン券データ記録です。その内容ですが、車内の各席に設置してある「リーダライタ」というカード情報を読み取る装置にカードをタッチするだけで、有効区間や料金、座席のデータを把握してくれるというものです。また「リーダライタ」は、空席は赤、着席は緑の表示がしてあるので検札がなく、空席状況も確認出来ますので座席の移動がスムーズに行えます。
 特に女性の場合、隣の席にどんな人が座るのかは気になるところです。座った途端に靴を脱ぎ、臭い足を投げ出し、ビールを飲み始めるおじさんとずっと一緒だったら最悪です!普通車ですので(東京には普通車にもグリーン席があったり、全車両2階建ても存在します!!)、通勤や小旅行で利用する人が多いですが短い時間でも快適に過ごせるのはうれしいことです。
その2
「“オトコ視点”のフリーペーパーR25」
 “R25”とは、18禁ならぬ25禁の雑誌です。世間では元気がないと言われている、ちょっと悲しい世代(25〜32才)の男性に向けて編集された毎週1回発行のフリーペーパーです。
 首都圏ではこの世代の男性は300万人ほどで、社会や仕事先でも責任ある立場になりつつあり、情報の理解やコミュニケーションに苦労をしているだろうオトコの皆さんを応援するコンセプトで作られています。
 特徴としては、記事内容は深く掘り下げず1記事800字以内(あまり長いと読んでもらえないらしい)。政治、ビジネス、スポーツ、食、趣味の分野まで広く浅く取り上げられています。またテレビ欄は平均帰宅時間に合わせて22時以降です。
 表紙もジュースをこぼしても安心と撥水加工してありますので、とてもフリーペーパーには見えないくらい高級感があり、おしゃれです。きっと広告掲載料が高いとおもいますが、発行されると(コンビニや駅にラック設置)あっという間に無くなるほど、人気があります。この世代の男性は、ここまで支援してあげないといけないのか?と少し情けなくもありますが、東京にお越しの際は一度手に取ってご覧頂きたいと思います。
その3
「棚卸前には企業行脚?」
 渋谷にある雑貨屋ですが、中間、期末の棚卸シーズン前になると在庫過多になった商品を持って企業を訪問します。なぜこんな商品を大量に仕入れたの?と尋ねたくなるような、店頭に並んでいると決して購入しそうにない品物ばかりですが、意外と買ってもらっているようです。大阪ではありませんが、商魂たくましいです。しかし、早く仕入れ方法の再検討を望んでやみません。


禁煙席とたばこを吸わないお客と

一級販売士 松尾 宏一

 最近は特に健康増進法が施行されて、いろんな所が禁煙になっています。飲食店も例外ではなく多くの店舗が禁煙席をもうけています。その禁煙席についてですが、以前(健康増進法が施行される以前)とある飲食店に食事をするため訪れたときのことでした。 店にはいると店員さんが「禁煙席のご希望はありますか?」と微笑みかけてきた。
 タバコを吸わない私は当然、「禁煙席をお願いします。」と返答、待ち時間なくすぐに席に通されたのですが、その隣は喫煙席でした。私が案内された席は単に禁煙席の札があるだけで隣席とはしきりすらありません。
「こちらが禁煙席になります。」
 店員さんは笑顔で案内。まあ推察の通り、隣席に座っていたお客様が程なく喫煙を始めました。当然その煙が私の席まで流れ、タバコ独特の臭いが漂って来ます。その場から離れたとしても、当分は服にその臭いが染み付いてとれないであろうことは簡単に予想できました。普段からそんな経験は多々あったのですが、今回は「禁煙席に案内」と言われただけに憤りを感じました。とはいえ気が弱い私?は隣席のお客様にはもちろん店員にクレームをつけることもなく手短に食事を済ませ、その店を後にしたのでした。
 考える機会をそのお店に与えて頂きました。
「禁煙席とは?」目的は何でしょうか、誰のために用意されているのでしょうか。たとえばタバコの煙が充満している密閉された部屋の中でも禁煙席とかかれた札があれば、そこは禁煙席と呼べるでしょうか。小さな子供にその中で食事をとらせることができますか?おそらく抵抗感はあるはずです。
 そもそも禁煙席とは、たばこを吸わないお客様や吸いたくないお客様のために用意されている席だと思います。そして彼らの要望は、タバコの臭いがしない、煙がない、灰が散っていないなどです。健康増進法でも受動喫煙防止の対策を求めていますが、禁煙席を用意しろとは言ってません。しかしながら今回私が訪れた飲食店はその要望を満たすものではありませんでした。むしろ喫煙するお客様のために「禁煙席を作りましたので喫煙するお客様はご遠慮なくどんどん喫煙してください。」と歌っているような印象すら受けます。つまり喫煙するお客様のための禁煙席です。これでは本末転倒です。
 マーケティング志向という言葉があります。
 「市場(お客様)に対して耳を傾け、そこから聞こえてくるニーズを明らかにして、効果的に顧客満足を提供することだ」と言葉では簡単なのですが、なかなかこれを実践することは困難なようです。しかもその市場が求める「ニーズとウォンツ」の混同がよく見受けられます。今回のケースに強引にあてはめると、嫌煙のお客様のニーズは「タバコの臭いや、煙のないところで食事をしたい、おいしく楽しく食事を頂きたい。」です。そしてそのウォンツとして「禁煙席」を欲求しています。しかし「禁煙席」はあくまでニーズを満たすための一つの方法に過ぎません。ニーズを満たすのであれば別の方法、たとえば「禁煙室」を作るとか「隣で喫煙しても煙や臭いが広がらない装置」を発明するなどでもかまわないでしょう。
 今回お店側は「禁煙席」をもうけることで「嫌煙のお客様」に満足を提供しようというねらいがあったのでしょうが、「禁煙席」というウォンツが先行してしまいニーズを満たしていません。そのねらいは達成できていないと早く気がつくべきです。
 これまでは「禁煙席」を前提に考えましたが、それ以前に「禁煙席が必要なのか」ということを考えることも必要でしょう。 狭い店舗で無理に「禁煙席」を作ろうとしても無理がありますし、そもそもその店舗の顧客に嫌煙家がいるのかどうか、喫煙するお客様はどう思うのかを考えるべきです。ひょっとしたら喫煙できないことで以前からいた顧客が窮屈に感じ離れてしまうかもしれません。そういった顧客が大半を占めるのであれば大変なことになってしまうでしょう。
 いろいろな角度からターゲットになる市場を調査すること、「ニーズとウォンツ」を的確に捉えることや、市場を構成する客層を分析することはとても大切なことだと感じます。改めて述べる必要もないでしょうがこれは決して飲食店だけに限ったことではなく全ての企業に共通することです。大切なことを今回再認識させられました。
 また仕事中だけではなく、生活のあらゆるシーンの中に教材となるものが隠れていることも強く感じました。今後の自身の活動において生かしていかなければと、肝に銘じている次第であります。